映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」で、百合は、なぜ彰ではなく母親を呼んだのか?

映画

先日の金曜ロードショーで「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」がテレビ放映されましたね。

映画公開当時も予告を見てね、あーよくある恋愛ものアレかーぐらいの印象を勝手に持ってたんですよね。

で、今回テレビ放映されるっつーことで福原遥ちゃんかわいいし、僕暇だしってことで観てみたんですけど、1つすっごい気になることがあったので、ここで話させてください。

超ざっくりいうと、この映画は、女子高生である百合がお母さんと喧嘩して家を飛び出した先にたどり着いた防空壕跡で1945年の戦時中の日本にタイムスリップして、特攻隊員の彰と出会って恋をするっていうお話。超ざっくり。

で、Youtubeの予告を見ても、どうしても、あー恋愛もののアレかーっていうイメージを受けてしまうんですけどね、実際観てみるとこの映画、どうやら、「現代の若者」と「戦時中の若者」の「対比」が常に描かれている映画なのかなと思うに至りました。

生まれた時からなんでもある現代に生きる若者と何にもない戦時中に生きる若者との対比ですから、そりゃーもう色々と価値観の違いが出てくるわけですよ。ちょっと現代の女子高生である百合にイラッとしちゃう場面もあったり。

それで、特に、その対比がより鮮明に表現されていたのが百合が突然の空襲に襲われるシーン。

最初に百合も空襲を受けた町の人たちが逃げる方向に走り始めるんですけど、途中でなぜか引き返します。その理由が「居候でお世話になっているお店の女将さんのことが心配だった」から。

それでみんなとは逆方向に走り始めるもんだから、何人かの町人にぶつかるんですよね。ぶつかる度に、「何してるんだ!早く向こうに逃げろ!」っていってくれてるにも関わらず、それを聞かずにお店の方向に走り続ける百合。

そしたら、もう案の定ですよ。焼け落ちる家屋の瓦礫に足が挟まれ逃げられなくなって、百合の足元に火の手が迫ってくるんですよね。もう、イラッとポイント。いわんこっちゃないですよね。

いよいよ、百合が自身の死を感じた時、思わず叫んだ言葉が「お母さん」だったんですよね。

この映画がただの恋愛ものの話なのであればね、ここで叫ぶ名前って、恋心を抱いてしまった彰の名前が定石じゃないですか?だから、百合がここで思わず母親を呼んだ時に「あれ?」って思ったんですよね。タイムスリップしてるから母親なんていくら呼んだって来ないのよ。

もうだめだーって時にここはセオリー通り、助けにきてくれたのが彰で、瓦礫をどけて、百合をおぶって、なんとかかんとか火の手がない場所までたどりつきます。

せっかく彰が助けてくれたのに、百合が居候先の女将さんから米に変えるために預かった大事な着物を失くしたことに気付いて、再び炎燃え盛る街中に引き返そうとしてね、もう、おじさん、百合を正座させて説教したい気持ちが溢れ出て溺れそうでしたよ。

そしたら、彰が「命が一番だろう!!」つって、声を荒げながら百合を引き止めるわけですよ。当たり前やん。お前は何をしてるんだと。いくら福原遥ちゃんがかわいいからってそれはあかん。かわいいは正義だけどもそれはあかんで?

自分の命はそっちのけで、物やその場の感情に振り回される現代の若者百合。

片や、自分の命を国や家族、そして未来の平和のために捧げようとする特効隊員の彰。

百合があるシーンで、

「負ける戦争だとわかっているはずなのにその戦いに命をかけることなんて無駄!それに何の意味があるのか?」といいます。

でもね、明らかに、自分の命や未来を大切にしてないのは百合の方だよねって。本当に真剣に、自分の命に、家族の命に、これからの未来に向き合っているのはどっちなのよって。

燃え盛る家屋の瓦礫に足が挟まって、死を感じた時に、思わず「お母さん」を呼んでしまった理由。

それは、百合の彰に対する恋は所詮「普通の恋」だったからではないかと。これから先も自分の人生は続いていくのが当たり前で、彰が特攻隊として数日後にいなくなってしまうことに関してもなんだかんだそこまで現実味を感じていなかったんじゃないかと。

だから、自分の命が危険に晒された時に助けを求めたのは、結局、母親で、自分の人生を自分で決めきれない、大人には程遠く母親の保護が必要な存在であることが色濃く描かれたシーンだったと思う。

燃え盛る炎の中に飛び込んで百合を助けにきてくれた彰。まさに「命をかけた恋」「人生で最初で最後の恋」を自分の残された短い時間の中で、精一杯していたんだろうと思う。

自分自身で特攻隊に志願した彰。誰にも頼らない、頼れない、選択肢もない環境で、自分の人生を自分で決めて、時には特攻隊から逃げ出す友人がいても、ブレずにそれに向き合う姿は、それとは真逆の現代で本当に大切なことが何かを見失いながら生きる若者の姿とその是非を残酷なほどまでに浮き彫りにした映画、それがこの「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」でした。

全然、恋愛もののアレではなかったので、観てよかったです。

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。(本編DVD1枚) [DVD]
【尺数】本編約128分 予告集(特報・予告) 発売元:松竹 販売元:松竹 ©2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会

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